Teacher’s Eye 研究最前線 Teacher’s Eye 研究最前線

商学部

堂野崎 衛 教授

MAMORU DONOSAKI

PROFILE
広島県出身。商学部教授。2006年3月に中央大学大学院商学研究科商学専攻博士後期課程満期退学。その後、中央大学商学部、埼玉学園大学経済経営学部などで教鞭を執り、2010年4月から拓殖大学商学部に非常勤講師として入職。2019年4月より現職。担当科目は、「販売実務論A」「マーケティング特論(マーケティング理論と実践)」など。著書(共著)に『基礎から学ぶ流通の理論と政策(第3版)』『リテールマーケティング入門』などがある。

研究テーマ 小売業における
フランチャイズビジネス展開について

小売業の変化を見つめれば、
世界の動向が把握できる。

「小売業」に興味を持ったのは、
アパレルショップ巡りがきっかけ

 私がマーケティングに興味を持ち始めた学生時代は、暇さえあればアパレル店を覗きに行っていました。地元、広島県の呉にあるアーケード商店街「れんがどおり」や、大学進学で上京してからは裏原宿が大のお気に入りでした。その頃、ユニクロがカラフルなフリースを低価格で発売し、爆発的にヒット。「ユニクロは小売業なのに、なぜ自分たちで商品を開発・製作・販売まですべて行うのだろう?」という疑問を持つようになったのが、小売業のマーケティングに対する興味の発端です。

 当初は、主にアパレル分野に興味を持っていたのですが、小売業について学んでいくうちに、スーパーマーケットやコンビニエンスストアにおける店舗展開や商品ラインナップに関しても面白さを感じるようになっていきました。スーパーやコンビニは、食材や雑貨など日常生活に欠かせないものを買う場所です。しかし、商品の陳列が工夫されていたり、限定商品を取り扱っていたりするなど、「また行きたい」と思わせる仕掛けがあることに気づいたのです。それを機に、品揃えや店舗展開などに注目するようになり、大学院からはプライベートブランドに関する研究に取り組みました。

 現在はフランチャイズビジネス展開に関する研究も行っています。商学部では2016年から日本フランチャイズチェーン協会の寄附講座として「流通マーケティング特殊講義A(フランチャイズビジネス研究)」が始まり、2020年から「フランチャイズビジネス論」として正規科目に。そのことをきっかけに、研究を始めました。

 フランチャイズとは、「企業が有する商標やノウハウを用いて、加盟店が店舗運営を行う」というシステムのことです。加盟店は本部企業にロイヤルティ(権利使用料)を支払うことで、「店名」「商品」「販売ノウハウ」などを活用できるようになります。本部企業側としては、加盟店オーナーに経営を任せることで低コストかつ迅速に店舗展開ができ、ブランドを広く認知してもらえるというメリットがあります。

 フランチャイズ展開している業種には、飲食やサービス、小売業がありますが、私の主な研究対象は小売業です。これまでは、地方のコンビニや100円ショップ、作業服販売店、家電量販店などを研究対象としてきました。

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研究の拠点となったトルコ・イスタンブールにある世界最大級の市場グランバザール(カパルチャルシュ)
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観光客が行き交うドイツ・ミュンヘンのカールスプラッツ
研究の面白さ 企業の戦略が見える
「フランチャイズビジネス」

 フランチャイズビジネスを研究していくと、その展開の仕方から各企業の出店戦略や経営理念をうかがうことができます。例えば、北海道を主戦場として展開するコンビニ「セイコーマート」は出店当初、積極的にフランチャイズ展開を行っていました。しかし、1993年頃から直営化に舵を切り、現在では1000以上もある店舗のほとんどが直営店になっています。その背景には、オーナーの代替わりによる担い手不足という課題を本部が引き継ぎ、「自社自身の手で北海道地域の人々に愛される店舗ブランドとして育てていきたい」という考え方があるということを知り、とても興味深く感じました。

 一方で「業務スーパー」の場合は、そのほとんどがフランチャイズ店です。運営会社である株式会社神戸物産は商社であるため、業務スーパーでは基本的に自社で取り扱う商品を納品しています。しかし、野菜などの生鮮食品や、顧客ニーズが高いメーカーの商品など、神戸物産が取り扱っていない商品については、各店舗で自由に仕入れることができるようになっているのです。

 一般的なフランチャイズ店では、本部企業によって仕入先や運営規則が厳しく定められています。それはブランドイメージを守るためですが、店舗オーナーの裁量が発揮できないなどのデメリットもあります。業務スーパーでは、そのようなフランチャイズビジネスのデメリットを上手く回避していると言えます。

 私の研究は現在、このような事例をリサーチしている段階です。これからも、さまざまな企業に話を伺い、フランチャイズビジネスの実態を把握し、その傾向や課題などをうまく整理していきたいと考えています。

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北海道・札幌市北区にあるセイコーマート1号店(1971年出店)
これからの小売業について 世界の潮流に合わせて、小売業は変化する

 小売業は「時代適応業」だと言われています。消費者のニーズは常に変化していき、国の政策やキャッシュレス決済の普及など、世の中の流れを汲まなければなりません。これまでのフランチャイズビジネスは、本部企業が定めた契約内容を厳守することが一般的でした。しかし、コンビニをはじめ成熟期を迎えている市場では、時代に適応していかなければ生き残れないと考えています。市場環境が変化する中で、小売業自体がどのように変わっていくのかを、今後も研究し続けていきたいと考えています。

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「マーケティング」や「販売実務論」の授業で使用する 編著で関わったテキスト(2023年春発刊)
在学生へのメッセージ 学生時代に身に付けたい「アウトプット力」

 拓殖大学では、マーケティングに関する講義を複数担当しています。指導する際に心掛けているのは、学生の皆さんにとってなるべく身近な事例を挙げながら、何かしらの気づきを得てもらえるようにすることです。

 卒業後、社会人として評価されるのは、アウトプット力です。知識を蓄えるだけでなく、きちんと解釈し、自分なりに考え、伝えられるかが問われるのです。画一的な思考に囚われないためには、多角的な視点が大切になります。在学中から積極的に興味・関心のあることに触れ、可能な限り多彩な経験を積みながら、そのような視点を育んでほしいと思います。

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趣味は「マイレージ」と「スニーカー」

 プライベートでは、マイレージを貯めることに夢中です。ものを買うときは、マイレージが一番貯まる方法を模索します。街中でほしいものを見つけても一旦保留して、貯まりやすい方法をリサーチしますね。

 あとは、スニーカーを集めることが好きです。自宅の書斎には、70足ほどのスニーカーが、箱に入ったまま積み上げられています。特に好きなのは、NIKEのエア・ジョーダン。ほとんどのものは、一度履いたら箱に戻して保管しています。

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書斎で保管している愛着あるスニーカーの一部

ゼミの紹介

テーマ現代の小売流通とマーケティング

2012年から「川口ストリートフェスティバル」(埼玉県川口市)に、毎年ボランティアとして参加。2015年からは企画会議にも参加し、イベント成功をめざして活動しています。
2022年には、商業施設「アリオ川口」にて、子どもたちを対象としたワークショップを開催。
ゼミ生の企画した「オリジナルうちわ作り」や「オリジナル万華鏡作り」を実施しました。
地域が抱える問題を理解し、地元の方々と共に賑わいを取り戻す方策に取り組むことで、地域活性化や自分たちができる地域貢献について考えています。

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