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中嶋なかじま 知紗ちささん CHISA NAKAJIMA

ヒューリックホテルマネジメント株式会社 浅草ビューホテル 宿泊部フロント課

[ PROFILE ]
東京都墨田区出身。2020年拓殖大学外国語学部スペイン語学科を卒業し、日本ビューホテル株式会社に入社。札幌ビューホテル大通公園に約2年間勤務した後、他社出向期間を経て2023年3月、浅草ビューホテルアネックス六区の開業とともにフロントに着任。同社は、2023年10月に日本ビューホテルとヒューリックホテルマネジメントが後者を存続会社として合併し、ゲートホテルや東京ベイ舞浜ホテルも運営している。

留学で身につけた受容力と度胸。
知らない世界にぜひ飛び込んでみて。

 浅草ビューホテルアネックス六区という新しいホテルでフロントを務めています。夜勤担当なので17時~翌朝11時までの18時間勤務。途中で3時間ほど仮眠をとります。「フロント」というと、ゲスト(宿泊客)のチェックイン・チェックアウト対応がメインだと思われがちですが、実は業務全体の1割ほどにすぎません。ゲストからのさまざまな要望にお応えすることはもちろん、翌日の準備や部屋割りなど多くの業務があり、当然ながら緊急対応も必須で、数か月に一度は夜中に救急車を呼ぶことも。

 そんな大変な面もあるフロント業務ですが、その仕事に就くことは私の長年の夢でした。きっかけとなったのは幼い頃によく行った家族旅行です。どこであれ、旅先で泊まったホテルの印象はワクワクするような「非日常」の思い出の一部。次第に、「私もだれかの思い出づくりに関わりたい」と思うようになりました。

 具体的に進路を考える時期になると、ホテル以外の選択肢も検討はしました。しかし、「直接お客さまと接することのできるB to Cの仕事がしたい」という気持ちは明確だったため、ほかの業界も受けてみたものの、最終的にはもともと憧れであったこの世界に入ることを決心。日本ビューホテルに入社しました。

 社会人デビューした2020年の春はちょうどコロナ禍で、私たちは入社直後からいきなり自宅待機を余儀なくされました。与えられたタスクもなく、ひたすら会社からの連絡を待つだけ。外出もできず、家にこもって本やネットを見て過ごす日々は、辛くなかったと言えば嘘になります。やっと出社できるようになったのは10月。その半年間、モチベーションを維持できたのは、「憧れのフロントの仕事を一度もやらないまま諦めたくない」という思いが強かったからだと思います。

 その後もしばらくホテル業界はコロナ禍による苦境が続き、不本意な人事異動などが原因で辞めていった同僚も少なくありません。同じ夢をもって入社した同期の数も、5年目のいまではかなり減ってしまいました。そんな状況下でも私は希望したフロント業務に一貫して携わることができており、幸運だと思っています。初の配属先だった札幌ビューホテル大通公園には、2022年8月まで2年近く勤務。その後、約半年間の他社出向を経て2023年3月、浅草ビューホテルアネックス六区の開業と同時にフロントに配属され、現在に至ります。

 好きで携わっているフロントの仕事ですが、小さな失敗談はたくさんあります。朝食のラストオーダー時間を伝えるのを失念してしまい、ゲストが朝食会場に入れず、お叱りを受けたことも。ただ、お客様の身の安全に関わる、取り返しのつかない失敗だけはあってはなりません。その緊張感は常日頃から忘れず、業務しています。

 やりがいを感じるのはやはり、ゲストに喜んでいただけたとき。ネット上の良い口コミもうれしいですが、お客様の笑顔を直接見ることができるのは、フロントならではの醍醐味です。思い出すのはまだ新人の頃、視覚障害のゲストがいらしたときのことです。普通なら5分で終わるチェックインですが、30分以上かけて館内施設や部屋の設備説明など自分なりに精一杯考えて対応しました。その結果、「とても丁寧に説明してくれたおかげで、安心して滞在できました」と感謝されたことはいまでも忘れられない経験となりました。

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 私が入社した日本ビューホテルは2023年10月、ヒューリックホテルマネジメントと合併しました。ヒューリックはほかにもゲートホテルや東京ベイ舞浜ホテルを手がけています。私にとっては、転職せずともコンセプトや客層の違うホテルで学べる可能性ができたことになり、その機会が来ることを楽しみにしています。今後も経験を積み重ね、フロントという仕事を極めることが目下の目標です。しかし、ホテルの業務はもちろんフロントだけではありません。フロントが属する宿泊部には、予約や営業などいわゆるバックヤードの仕事もあります。将来そのような業務に就くとしても、フロントでの経験は必ずいきると考え、日々努力しています。

 いま勤務しているホテルでは、ゲストの8割が外国人。生活習慣の違いなどからお互い戸惑う場面もあり、異文化に対する理解は欠かせません。そこには、在学中の留学経験がいきていると感じます。私は2年次に8か月間、スペインのサラマンカ大学へ留学しました。すばらしいホストファミリーに恵まれ、現地の人との交流も楽しみましたが、最大の収穫となったのは他国から来た留学生、特にアジア系の学生と友人になれたことです。それまでは正直、中国や韓国に関してあまりいいニュースを聞くことがなく、中国人や韓国人に対して良い印象が持てませんでしたが、実際にスペインで出会った彼らはみんな優しく、とても良い人たちで、私の先入観は根底から覆されました。

 考え方や価値観は国によって異なります。私は、「自分はこうだ」と決めつけて拒否するのではなく、違う考え方もあるのだと受け入れる「受容力」を、留学を通して身につけることができました。そして、留学でのもうひとつの収穫は「度胸」。できるかどうかわからなくても、「とりあえず立ち向かう」精神が身についたのも留学のおかげです。

 私がスペインに関心を持ったきっかけは、高校の教科書に載っていたサグラダ・ファミリアを見てからのこと。百年以上かけても完成しないという建築物に衝撃を受けたのです。それを設計したアントニ・ガウディや、イスラム教文化とキリスト教文化が融合した都市グラナダのアルハンブラ宮殿など、調べるほどにどんどんスペインへの興味がふくらみました。大学ではスペイン語を学び、スペインに留学したい――。そう考え、中でも拓大を選んだのは、留学がカリキュラムの一部に組み込まれており、休学せずに長期留学が可能だったからです。

 私は学生時代、ほかにもいくつかの国へ旅行していました。知らない場所へ行き、知らないものを見聞きすることは私の人生を豊かにしてくれたと確信しています。海外に出たからこそ、日本の良さもよくわかりました。在学生のみなさんも、時間のあるうちにぜひ色々なことに挑戦してみてください。留学や旅行に限らず、アルバイトでもいいでしょう。自分の知らない世界に飛び込むことで、自分に合うもの合わないものを見つけていってほしいと思います。

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大学2年次、留学先のスペイン サラマンカの中心地(プラサマジョール)にて (1)。 クラスメートとの1枚。日本人は1人でしたが、同じアジア圏のクラスメートが本当に仲良くしてくれました(2)。 仲良くなった留学先のクラスメートと拓大生で中華料理を食べにいきました(3)。 卒業旅行で訪れたペルーのマチュピチュ。ボリビア、ペルーともに学んだスペイン語をいかすことができました(4)。

馬淵 史郎さん SCHEDULE

WEEKDAY

1日目
7:30

起床

10:00

ジム

暗闇で自転車を漕ぐフィットネスをしており、出勤前に一汗流すのがストレス発散になっています。

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17:00

出勤、チェックイン対応、インフォメーションなど

18:00

部屋割りや団体客の準備、事務作業

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2日目
24:00

仮眠

3時間の仮眠を取ります。

3:00

引継帳の用意、清掃指示

8:00

チェックアウト対応、日勤者への引継ぎなど

11:00

退勤

12:00

夜勤明けにカフェ

浅草周辺のカフェを開拓しています。

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15:00

帰宅

シャワーをあびて、3〜4時間ほど睡眠を取ります。

19:00

夕食

24:00

就寝

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