名門・明徳義塾高校の監督であり、第31回WBSC U-18W杯を優勝に導いた父と、2020年から拓殖大学野球部を率いる息子。同じ「野球監督」という道を歩む2人は、どのような親子なのでしょうか。
普段はどのような親子関係ですか?
史郎:ごく普通の親子です。同じ野球の監督という立場なので、アドバイスをすることもありますね。明治神宮野球大会に出場するときは練習のため拓殖大学のグラウンドを借りるので、そのときに顔を合わせたりもします。
烈:仲はいいですね。かなり頻繁に電話しています。内容はほとんど野球の話です。
「野球監督」として、お互いのことをどう思っていますか?
烈:野球はただでさえ厳しい世界ですが、高校野球はトーナメント戦なので特にシビア。選手が活動できるのは実質2年半しかありませんし、甲子園に出られるのはすべての試合に勝ったチームだけです。勝つための正解もない中で、何十年も監督を続けているのはすごいことだと思います。言葉の重みが違います。
史郎:人様の子どもを預かっているので、野球だけでなくきちんと社会に送り出せるように人間形成をしてくれると嬉しいです。「4年間野球部をやってきてよかった」と学生に言ってもらえるような監督になってほしいですね。そのためには自己研鑽が欠かせません。
また、勝負の世界で勝ち抜いていくのは非常に難しいことです。アドバイスはしますが、結局は自分の指導方法やスタイルを確立するしかない。拓殖大学野球部の名前が全国でメジャーになるように、ぜひがんばってほしいです。
拓殖大学での4年間で特に思い出深いのは?
史郎:4年間あいさつも返事もすべて「押忍」だったことや、学内にグラウンドがなくて公共の球場までヒッチハイクで通ったこと、厳しい練習環境のなかで2部3位という成績を残せたことなど……思い出が多すぎてひとつを選ぶのは難しいです。強いていうなら常に清掃をしていたおかげで、寮の近隣の方々に大切にしていただいたことでしょうか。
烈:大学最後のシーズンで、2部優勝を果たせたことです。当時は下位に甘んじることが多く、3部との入れ替えになる可能性すらあったので、優勝できるなんてまったく考えていませんでした。1部昇格には至りませんでしたが、先輩たちの思いを引き継ぎ、後輩にも伝えられてよかったと思います。
烈さんの高校時代、監督と選手という関係で難しさは感じませんでしたか?
史郎:烈は明徳義塾の寮で生まれ育ちました。小さい頃は家にいないと思ったら野球部の部員に遊んでもらっていたりしていました。そういう環境だったので「野球をやれ」を言ったことはありませんでしたが、本人としては当たり前の選択だっただろうと思います。ただ高校に入学するときには「野球部に入るなら3年間親子の縁はない」と伝えたので、本人も覚悟していたと思います。もちろん特別扱いはしませんでしたが、やっぱり親子でやるのは難しかったですね。
烈:やりにくいのは最初だけでした。最初は自分の父親に対して敬語で話す気恥ずかしさもあったのですが、慣れれば普通になります。理解のある仲間にも恵まれたのも大きかったと思います。ただ自分のなかでは、監督と選手として一線を引くようにしていました。
監督として、今後の目標を教えてください。
史郎:高校野球の4大大会のなかで、優勝経験がないのは春の選抜高等学校野球大会だけです。なんとか引退までに優勝して、グランドスラムを達成したいです。また甲子園はあと1回出場したら監督としての出場回数が日本一になるので、そちらも目標。体力は落ちてきましたが気力はまだあるので、元気なうちはがんばります!
烈:2部優勝を果たして1部に上がるのが最重要課題です。秋のリーグ戦では力不足を痛感したので、これからどう伸ばしていくか考えているところです。
史郎監督への質問
烈監督が母校である拓殖大学に進学したことについて、どう感じましたか?
やっぱりうれしかったですし、4年間、大学生活をまっとうできたのもよかったと思っています。ただ、拓殖大学はうちに限らず親子2代、3代で入学するという例が多いようです。母校に対する思い入れの強さに加えて、国際社会を志向する教育理念に共感する人が多いのではないでしょうか。
馬淵 史郎さん
烈監督への質問
監督としてやりがいを感じるのはどんなときですか?
選手の人間的な成長を感じたとき。日誌を書かせているのですが、それを読んでいると考え方の変化がわかるんです。うまくいっているときよりも、逆境にあるときのほうが成長するチャンスだと思っています。そこで逃げてしまうのではなく、仲間同士で励まし合いながら乗り越えてくれることを期待しています。
卒業生へのメッセージをお願いします!
監督として、僕はまだ修業中の身と思っています。選手たちからたくさんのことを学びながら、1部昇格をめざして練習に打ち込む毎日です。内田俊雄前監督から預かった「人間的成長なくして進歩なし」という言葉を念頭に置き、寮生活を含めた集団生活・集団行動の指導にも力を注いでいます。
全国から多くの選手たちが集まり、拓殖大学野球部として活動を続けられているのは、各地のOBの方々のご活躍とご声援があるからこそ。明治神宮野球場でプレーする姿をお見せできるように、これからも精一杯がんばります!
馬淵 烈さん
高知県出身。2012年拓殖大学国際学部国際学科卒業。高校時代は、父の馬淵史郎氏が監督を務める明徳義塾高等学校野球部において、主将兼エースとして活躍。拓殖大学に進学し、野球部で三塁手を務める。卒業後は社会人野球チーム・シティライト岡山を経て、2015年から拓殖大学野球部コーチに就任。2020年には同監督に就任した。
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