鈴木 暁さん SUZUKI AKIRA
外務省 大臣官房戦略的対外発信拠点室
- [ PROFILE ]
- 北海道小樽市出身。1996年拓殖大学商学部経営学科卒業、1998年同大学院経済学研究科国際経済専攻(中南米経済)博士前期課程修了。同年にメキシコ国立自治大学外国人コースへ。2001年より外務省在外公館専門調査員、2007年より外務省専門職員(外交官)として中途で入省。2021年より現職。
果敢に挑戦し続ければ、
大きなチャンスを掴み取れる。
私は現在、外務省の戦略的対外発信拠点室に所属し、「ジャパン・ハウス」という事業を通じて、日本の魅力を海外に発信する業務に従事しています。「ジャパン・ハウス」は、日本の多様な魅力を発信することにより、親日派・知日派の裾野を広げることを目的として、世界3都市(サンパウロ、ロンドン、ロサンゼルス)に設置された対外発信拠点です。展示ギャラリー、ホール、ショップ、レストラン・カフェ、ライブラリーなども兼ね備えた日本の魅力を五感で体験できる複合施設で、すでに各都市の主要文化施設として定着しています。私の業務は、各拠点で企画・実施する様々な展示やイベントを管理・調整し、3拠点が安定的に運営できるようにサポートすることです。
各拠点の運営は民間企業に任されており、各拠点のスタッフが外部のプロフェッショナルの知見を活用し、現地の人々の共感を得つつ、より深く理解されるための工夫を凝らした発信を行っています。各拠点でそれぞれ独自に企画・制作する「現地企画展」は各拠点の特徴を反映した内容となっています。一方、日本で企画する「巡回企画展」は3拠点すべてを巡回するものです。「日本とは何か」を表現する企画を公募し、日本を代表するデザイナーや建築家など、アート部門のエキスパートで構成される選考委員会が審査しています。これまでにアート、デザイン・建築、工芸、技術など、多彩なジャンルの展示を手掛けてきましたが、まだあまり知られていない日本の魅力を、世界に向けて発信できることに大きなやりがいを感じています。
外務省の業務に携わるようになったのは、2001年から。拓殖大学大学院を修了し、メキシコ国立自治大学外国人コースでスペイン語を学んだ後、進路に迷っていた私が偶然見つけたのが、外務省専門調査員の試験でした。募集していた在キューバ日本国大使館のポストは人気だったため、受かるとは思っていませんでしたが、運良く合格しました。フィデル・カストロ国家評議会議長(当時)の長大な演説と格闘する日々を過ごしながら、在キューバ日本国大使館に3年間務めた後、2004年からは在パラグアイ日本国大使館の専門調査員に。当時はパラグアイと日本の関係が大きく好転するタイミングだったため、大統領や外相の訪日、日本人移住70周年記念式典などがあり、多忙を極めた日々を送っていました。その中でも特に印象に残っているのは、秋篠宮殿下御訪問の準備・対応です。小さな大使館だったので、受け入れには困難を極めましたが、殿下に同行する大役も仰せつかるなど、またとない貴重な経験をさせていただきました。
殿下の御訪問が終わり、2度目の専門調査員としての任期を終えつつあった時、私は再び進路の問題に直面しました。年齢は35歳。パラグアイで結婚したこともあり(残念ながら、妻は日本人ですが・・・)、帰国して実家の家業を継ぐことも頭をよぎりましたが、タイミング良く、外務省専門職の中途採用の試験があることを当時の大使が教えてくれたため、その試験を受けることに。もちろん難易度が高い試験なので、さすがに今回ばかりは無理だろうと思っていたのですが、幸運にも採用されました。そして、2007年に外務省に入省。以後、在レシフェ日本国総領事館、在サンパウロ日本国総領事館、在スペイン日本国大使館に勤務しました。このように「海外雄飛」を実現し、各国の滞在を通じ、その国の文化や人々の優しさに触れ、業務や生活上の困難を克服できたのは、大学院を含む拓殖大学での6年間があったからだと思います。
勉強嫌いだった私は団塊ジュニア世代で受験者も多く大変な時代だったこともあり、浪人の末、どうにか拓殖大学に入学。当時は本当に落ち込みました。不本意ながら始まった大学生活でしたが、その境遇をあえて受け入れ、与えられた環境の中で頑張っていこうと決意し、入学後は、勉学や課外活動など意欲的に取り組みました。特に注力したのは、大学祭実行委員会での活動です。イベントの企画・運営に興味を持っていた私は、積極的に企画立案を行いました。当時バンカラな拓大で初めてミスコンを企画したり、国際色豊かな大学の特長を生かし、研究会や愛好会の模擬店を一か所にまとめて屋台村のような会場作りをするなど、新たな試みを導入し、大学祭をさらに盛り上げることに成功したのです。大学当局とも侃々諤々の議論もしました。学祭を円滑に運営するために、体制の整備、人員の確保・配置や対外的な交渉を行うなど、組織としてイベントを主催する際に必要なことを全て経験しました。まさかこの学祭での経験が、今の職業で、総理をはじめとする日本からの要人の受け入れなど、ロジスティックを考える際に役に立つとは夢にも思いませんでした。
元々、漠然と「海外雄飛」を夢見ていた私ですが、具体的に行動に移すことができたのは当時交際していた女性の存在も大きかったです。彼女が麗澤会の海外派遣団として中国四川省に派遣された話を聞き、私自身も翌年のベトナム派遣団に応募。幸いにも派遣団の一員として参加が叶い、初の海外訪問でかけがえのない経験をしました。また、どうしても海外に行きたかった私は、スペイン語学科だったその彼女がメキシコ分校(現 提携校)へ留学する姿を見て、スペイン語が第二外国語でもないのに(第二外国語はロシア語)、翌年無謀にも分校の試験に挑戦。残念ながらそれには落ちてしまいましたが、代わりに大学から短期語学研修の奨学金をもらい、メキシコ・グアテマラに短期留学したりもしました。まさに、この時の中南米訪問の強烈なインパクトが、のちに大学院で本格的に中南米研究にのめり込んでいく第一歩となったのです。
思い返せば、徒手空拳で海外に飛び出して以来、いつも拓殖大学の先輩方に助けられてきました。メキシコでは、スペイン語もままならず、家探しに苦労している時に現地の先輩がステイ先を手配してくれました。また、偶然にもそのステイ先の同じ建物に拓大出身の方が住んでいて、知り合ってからというもの、家族のように毎週末食事に招いてくださいました。パラグアイ時代には、行きつけのラーメン屋の女将さんが涙ながらに「(亡くなった)うちの夫も拓大なのよ」と打ち明け、色々とサービスしてくれたこともありました。次のレシフェでは、総領事館の現地スタッフの中に拓大の先輩がいて、館内でも人望厚く優秀な職員として活躍されており、私自身、何度も仕事で助けられました。当時航空券の手配など取引先であった旅行代理店の先輩にも公私にわたりお世話になりましたし、レシフェ最年長の空手家の先輩は「自分の後輩が日本政府の領事という立場で赴任してくるのは誇りだ」と言って手を握りながら涙し、その姿を見て襟を出す思いがしました。さらにサンパウロに着任した際には、移住された大勢の先輩たちが大歓迎で迎えてくれました。スペイン時代には、地方で師範として空手の普及に努めている先輩に出会い、勇気づけられたこともありました。このように現地に根付いて活躍されている諸先輩が日本の外交の土台を支えてくれているんだなと行く先々で実感したものです。世界のどこにいても、苦しい時、困った時に各地で活躍する先輩方が親身になってサポートしてくれる。それが、拓殖大学の素晴らしさだと思います。
在学生の皆さんには、私のように拓殖大学にあるさまざまな制度やプログラムを積極的に利用して、海外で活躍できる人材をめざしてもらいたいです。せっかく拓大に入ったからには、使えるものをフル活用しなければもったいない。そして、自らの境遇に嘆くことなく、コツコツと真面目に行動し、人との出会いやチャンスを大切にする。途中で自分のように悩み、迷いながらも諦めない事。果敢に挑戦すること。そんなうちにきっと認めてくれる人が現れ、苦しい時などに誰かが手を差し伸べてくれます。そうすれば想像もしていなかった新しい世界に辿り着けるはずです。
鈴木 暁さん SCHEDULE
WEEKDAY
- 5:00
-
起床
家事、子供学習支援、ニュース番組チェック
朝しか子供達と話す時間が無いので、その時に会話しています - 8:30
-
自宅発
ジャパン・ハウス関連のSNS、HPおよびニュースチェック(通勤中)
- 9:30
-
登庁
各拠点、在外公館および受託企業などからのメールチェック・返信
- 11:00
室内会議
- 12:30
-
昼食
愛妻弁当、リフレッシュのためウォーキング
- 13:30
-
打ち合わせ・決裁など
各拠点の企画審査・事業承認、書類作成、巡回企画展の今後のスケジュールなど検討
省内外、在外公館、各拠点と調整 - 17:30
ロンドン幹部とのビデオ会議
- 18:00
資料作成・各種決裁など
- 20:00
-
サンパウロとのビデオ会議
時差のため早朝や夜の会議もあります
- 21:00
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退庁
ニュースチェック(通勤中)、英語・スペイン語のニュースなども聞きます
- 22:00
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帰宅
夕食や入浴などを済ませ、読書(西洋絵画・日本・世界の歴史など)・クラシック鑑賞
- 23:00
就寝
学報TACTの記事を読む
Back number
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