石原 真弓さん MAYUMI ISHIHARA
株式会社マザーハウス コーポレート部門 人事 グループ統括マネージャー
- [ PROFILE ]
- 山梨県出身。2004年、国際開発学部開発協力学科(現 国際学部国際学科)を卒業。教育出版会社で約2年、国際NGOで約6年勤務した後、2012年にモノづくりを通じて、途上国の可能性を届ける株式会社マザーハウスに入社。「ビジネスの関係を通して途上国と関わりたい」という思いを叶えた。5年間の店舗経験を経て、2017年9月より現職。採用・育成から労務、福利厚生などの制度整備まで、人事グループの業務を担当している。
支援ではなくビジネスを通じて途上国に貢献する。
拓大で学んだ、「現地に行って確かめる」姿勢で夢を実現。
私は現在、株式会社マザーハウスで人事グループのグループ統括マネージャーを務めています。マザーハウスは、「途上国から世界に通用するブランドをつくる」 という理念を掲げて2006年に創業した会社です。最初はバングラデシュで製造したバッグを日本で販売するところからスタート。今ではネパール、インドネシア、スリランカ、インド、ミャンマーを加えた6か国で雑貨やアパレル製品を企画・生産し、国内47店舗、海外7店舗で販売しています。その国の素材を活かし、そこにあった生産方法でモノづくりを行うとともに、現地と一緒により良いものを津くるため、働く環境を整えることにも注力しているのが特徴です。
開発途上国に関わる仕事に就くのは、10代の頃から私の夢でした。現代日本で暮らす私たちがいかに恵まれた境遇にあるか、戦中生まれの両親から常々聞かされて育ったことが影響したかもしれません。あるとき、母が見せてくれた青年海外協力隊の新聞記事を読み、「自分の知らないこんな世界があるのか」と驚いたことは今でも覚えています。途上国についての情報に触れるうち、「同じ人間なのに生まれた環境が違うせいでチャンスに恵まれない人たちがいる、その不条理に対し自分にできることはないか」と考えるようになりました。
大学選びの際もその観点から検討しましたが、それがちょうど2000年、拓殖大学に国際開発学部(現国際学部)が創設された年だったのです。募集要項にあった「現地で活躍できる人材を育成する」という言葉に強く惹かれて、同学部の開発協力学科(現 国際学科)への受験を決心しました。
大学での4年間は、熱心な先生方と意欲的な同期たちに刺激を受けながら、自分は将来途上国と具体的にどう関わり、どう貢献していきたいのか模索し続けました。そして当時たどりついた答えは、国際NGOで活動することでした。政府開発援助(ODA)や青年海外協力隊は、どうしても「支援」という立ち位置で関わることになります。それは有意義である反面、支援期間が終わると現地の状態は元に戻ってしまいかねません。その点で、国際NGOならば草の根レベルで現地に寄り添い、長い時間をかけて自立を促す活動ができるだろうと考えたのです。
ただ、そうした国際NGOのほとんどは新卒を採用しておらず、最低でも2年間の社会人経験が必要とされていました。そこで、私はまず一般企業で経験を積むべく教材販売会社に就職。営業職として戸別訪問販売に従事しました。営業こそ社会人の基本だと思ったからです。

そして2年後、いよいよ念願のNGOへの転職を果たしました。このとき公益財団法人オイスカを選んだのは、私が最も共感する活動をしていたから。当時私は「児童労働」の問題に大きな関心がありましたが、そもそもその根本には親の貧困があります。子どもを救うだけでなく、親がスキルを身につけ収入を得られるようにしなければ問題は解決しません。途上国の農村支援を通じて現地のリーダー人材を育てるというオイスカの活動は、まさにその部分に働きかけるものでした。
私はオイスカで広報業務を2年間、さらにファンドレイザーとして企業から寄付・協賛を得てさまざまなプロジェクトを運営する業務に4年ほど従事。その後に、現在の株式会社マザーハウスに転職することになります。NGOからビジネスの世界へ。その背景には私の課題意識への変化がありました。
オイスカの広報として私は、海外でいくつかの支援現場を取材する機会に恵まれました。たとえばフィリピン・ネグロス島でのプロジェクトは、養蚕技術の指導により繭の収量や品質を向上させ、農家が安定して収入を得られるよう支援するものでした。その現場を見ていて、再び疑問がわいてきたのです。たしかに現地の役に立ってはいるけれど、それが「支援」である以上、どうしても支援する側・される側という立場に分かれてしまう。もっとフラットな関係になれないものかと。
それに、いくら技術が向上して良い製品をつくることができても、出口、すなわち売り先がなければ収入に結びつきません。でも「支援」には限界があり、出口の設計までは難しいのです。そこを解決するのがビジネスではないか、と考えました。ビジネスならば、販売を前提として良いものをつくることを追求し、その利益を現地に還元できるはずです。そのころ仕事を通じて知ったマザーハウスというベンチャー企業が、まさにそんなビジネスを体現していると知り、ここなら自分のやりたいことができると直感しました。
ただ、当時正社員の募集枠はゼロ。募集があったのはショップ店員のアルバイトだけでしたので、さすがに逡巡しました。でも、その後オイスカのファンドレイザーとして企業と協働するうちにますます、途上国の課題解決に向けて企業が「社会貢献」ではなく「本業」として関わる必要性を痛感するようになりました。だからこそ、相手国も含めた全員がwin-winなビジネスをめざすマザーハウスのような会社で働きたい。そんな思いが強くなっていったのです。

そして、ついにショップ店員への応募を決心したのが2012年のこと。結果的には、アルバイトではなくちょうど新設された契約社員の枠で採用され、店頭に立つことになりました。接客業は大学時代のアルバイト以来でしたし、ファッションの世界は未経験です。心配はありましたが、やってみたら思いのほか楽しくて。以前の教材販売の営業経験もいきたと思います。2年目からは店長となり、2店舗で約5年間、販売に従事した後、人事へ異動しました。
異動してからはじめは、採用と育成を担当。本格的な新卒採用を始めたばかりの時期だったので、研修制度も一から作りました。その後は主に、組織の拡大に合わせた各種制度の整備に携わっています。実際、マザーハウスは急成長しており、私の入社時は100名以下だったスタッフ数が、現在は社員・アルバイトを合わせて380名以上。毎年の増えていく出店数に合わせて新卒・中途、アルバイトなど非常に多くの仲間を採用していく必要があります。
最近では会社横断的なプロジェクトとして、組織文化の醸成にも着手しています。創業理念が明確なので、もともと一体感やスピード感は強いのですが、それでも組織が拡大しスタッフが多様化するにつれ、これまで「暗黙知」として共有されてきた文化やアイデンティティをあらためて構築・言語化する必要が出てきているのです。
楽しかったショップ店長から人事への異動を告げられたときは正直、少し戸惑いました。営業や販売と違い、人事の仕事は成果が出るまでに時間のかかることがほとんどであり、日々の業務の中で大きなやりがいを見つけるのは難しいかもしれないと考えました。でも、研修制度を整えた後に入社したスタッフから、「あのとき入社を決めてよかった、あの研修で気づきを得られた」などの良いコメントをもらうと、本当にうれしいです。
また、商品の生産国である現地の情報は常に社内で共有されるので、私たちのビジネスの結果として現地に良い変化が起きている実感を持てますし、スタッフはファクトリービジットという制度を利用して現地の工場を見学することも可能です。私もバングラデシュとスリランカを訪問し、ビジネスの利益が生産者に還元されていることを確認できました。

こうして私は、途上国と関わる仕事に就くという夢を実現しましたが、振り返ってみると大学時代に学んだことはすべて役に立っていると思います。知識やスキルはもちろんですが、いちばん良かったのは「外に出て自分の目で確かめる姿勢」が身についたことです。私はもともとあまり積極的に出ていくタイプではなかったのですが、拓大の同期生は、現地に行って実情を知りたいという意欲を持った人ばかり。私はそんな周囲に感化され、授業で学んだことをぜひ現場で体感したいと思うようになったのです。
1年次に参加したマレーシアでの短期研修プログラムでは、農村部の水道がない家でホームステイを経験したり、3年生の後期には、アルバイトをかけ持ちして貯めた資金でシンガポールに自費留学したり。卒論の研究用に、東北タイの農村を訪れる現地調査に参加させてもらうなど、機会を見つけては海外に出かけたものです。
若者が内向き志向になったと言われる今、マザーハウスで採用に関わっていてもそれは感じます。ただ、外に目を向けるには何かのきっかけも必要でしょう。私の両親がそうだったように、周囲の大人が、そういう機会をもっと積極的につくることも大事ではないでしょうか。
先日、国際学部の授業内で在学生向けにマザーハウスの事業や私の経歴についてプレゼンする機会をいただきました。マザーハウスを知っている人も途上国に行ったことがある人もほとんどいませんでしたが、授業の後、目を輝かせて質問しにきてくれた方が少なからずいたのです。こうして直接触れ合うことで、興味を持ってくれる人は確実にいるとわかり、きっかけづくりの大事さを再認識しました。これからも講演会や出前授業などを積極的に行っていきたいと思っています。
情報があふれる現代、SNSを見れば海外のことも何でもわかった気になれます。しかし、学生のみなさんは、そこで終わりにせず「本当はどうなんだろう?」と考えてみてほしいのです。実際に海外に行かないまでも、詳しい人に話を聞きに行くだけでもいいでしょう。一歩外に出てみることで得られることがたくさんあるはずです。
石原 真弓さん SCHEDULE
WEEKDAY
- 7:30
-
起床
- 9:30
-
出勤
メールやチャット確認。スタッフから届く問い合わせなどへの返信。
- 10:00
-
ミーティング
人事担当者と地域ごとに店舗を統括するエリアマネージャーで、「出店計画の動き」「人員状況の確認」「体制の議論」などを行います。
- 11:30
-
採用関連業務
応募者の方への選考結果連絡や面接の設定、面接など。
- 13:00
-
ランチ
- 15:00
-
面談
チームメンバーと1対1で面談を行っています。
- 17:00
-
労務関連業務
給与対応や勤怠管理、スタッフからの問い合わせ対応など。
- 19:30
-
退勤
退勤までの時間はメールチェックや翌日の準備ほか、制度など新しいアクションなどを考える時間にしています。
- 20:30
-
帰宅
- 24:00
-
就寝
学報TACTの記事を読む
Back number
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2025.01.31
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