PROFESSOR’S HISTORY

研究最前線

高精細デジタル画像をもっと安全かつコンパクトに活用するために

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工学部 電子システム工学科 大学院 工学研究科 機械・電子システム工学専攻

渡邊 修 教授 WATANABE Osamu

Profile

2004年東京都立大学大学院工学研究科修了。博士(工学)。2012年より拓殖大学工学部電子システム工学科で准教授を務め、2021年より教授に就任。2020年よりISO/IEC JTC 1/SC 29/WG 1(JPEG(静止画圧縮技術)などを扱う国際標準化委員会の作業部会)の主査を務める。学会・国際標準化にて精力的に活動中。

“世界中の国の専門家とともに考える、デジタル画像の未来”

社会で使われるさまざまなデジタル画像

 静止画像圧縮の代表的な国際標準規格とされるJPEGやJPEG 2000を用いた、符号化された画像のセキュリティ技術および、画像検索技術の研究を行っています。例えばデジタルカメラで撮った写真やレントゲンで撮影したCTスキャンのデータ、気象衛星が撮った画像、動画配信サービスや映画館でのデジタル上映などがあります。高精細なデータを膨大に扱うのに必要なのが、データの圧縮技術です。独自の方式で互換性がとれず利用できないケースを防ぐためには、国際標準規格も重要になってきます。このように、社会で使用されるデジタル画像をよりスムーズに安全に活用するための研究を行っています。

 また音声・画像・動画などの符号化技術を標準化する国際組織「ISO/IEC JTC1 SC29」のWG1(静止画像の符号化標準を担当する作業部会)に所属し、世界中の専門家と議論して国際標準方式の策定を行っています。

 私が思う工学の理念は、技術によって人々の生活が向上し、よりよい社会の実現に役立てられること。純粋な学問としての探究だけでなく、自らの研究成果が社会の中で実際に役立っていると感じられることに、大きなやりがいと喜びを感じています。

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JPEG標準化作業の一コマ
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研究に興味を持ったきっかけ

 小学校の5~6年生頃からプログラミングが好きでゲームを作っていましたが、思春期の頃は他にも楽しいことがたくさんあって、少し遠ざかっていました。でも大学で進路を選ぶ際に、将来の仕事に関わるかもしれないと、もともと好きだったことは何かと立ち返り、工学部電子・情報工学科に入ったんです。

 大学3年生の時に受けた画像圧縮の技術についての講義が面白く、その先生の研究室に入ったところから、今の道につながっています。共同研究を行っていた企業を通して,自分の研究成果が策定中の国際標準化の審議のテーブルに上がるなど、世界とのつながりを感じられる貴重な経験ができました。

大阪・関西万博のスイスパビリオンに参加

 2年前の夏、ポルトガルで開催されたJPEG標準化委員会に出席した際に、委員長のスイス連邦工科大学ローザンヌ校のトゥラジ・エブラヒミ教授に「JPEG DNAプロジェクト」について質問したことがきっかけとなり、共同議長として関わらせていただくことになりました。莫大なデジタルコンテンツを記録することができる人工DNAは、現在、盛んに研究されている分野で、とても野心的な試みです。電力がかかるデータセンターと違い、環境負荷がかからない点も注目されています。本研究は大阪・関西万博のスイスパビリオンで展示され、同パビリオンにて6月に開催されたワークショップでは講演を行いました。

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スイスパビリオンで行われたワークショップにおける講演

授業で伝えたいメッセージ

 工学部ではプログラミングやネットワーク、画像工学などについて教えています。授業で伝えたいのは、大学での学びの先に、社会で求められる技術があるということ。大学の課題だけにとどまらず、その先にある世界について想像してもらえるように心がけています。また、学生には自分の力で世界を体験してもらいたいですね。日本は大学の勉強も日常生活も、日本語だけで問題なく過ごせますし、安全で恵まれています。それも素晴らしいことですが、世界に目を広げるのも大切なこと。ホテルや航空券を取ることだって、自分でやってみないとわからないですよね。少しでも世界に触れてもらえるよう、出張でさまざまな国を訪れた際には、学生にその経験を伝えるようにしています。

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JPEG会合の合間にUSの友人と夕食
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JPEG会合の合間にベルギー在住の友人と夕食

興味のままに探究してほしい

 締め切りもなく、興味のままに探究できる大学の4年間というのは、貴重な時間だと大人になって思います。「大学生のうちは遊んだほうがいい」という人もいますが、社会人になってお給料をもらうようになれば、いくらでも好きなことはできると思います。しかし、仕事が忙しくなれば、自由に時間を使って学ぶことは難しくなるでしょう。皆さんには自分の興味に基づいて、好きなことを探究してほしいし、授業をそのきっかけに使ってほしいです。大学の4年間の過ごし方次第で、大きく成長すると思います。それは必ず将来の糧になるはず。昔に比べて、いい意味で真面目な学生が多い印象もありますが、もっと自分の殻を破り、自分の責任でやりたいことをやってみてもいいと思います。

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留学先のブリュッセル自由大学のメンバーと夕食
Column
エレキギターに夢中だった大学時代

 大学時代は音楽サークルに入り、バンドでギターを弾いていました。工学部にはギター好きが多いんですよ。たとえばエフェクターやアンプはすべて電子回路。中身はどうなっているんだろう?みたいな興味もありましたね。音楽のジャンルにこだわりがなかったので、文化祭ではいろんなバンドによくギターを頼まれました。言われるがまま、引き受けていたら忙しくなってしまい、やけになって練習もしないで部室で寝ていたのをいまも覚えています(笑)。今はあまり弾けていませんが、10年前までは、友人とバーでライブをすることもありました。現在は小さな子供が3人いるので、休日は子供と遊びに出かけることが多いです。

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