Graduates’ Journeys

拓大生の未来

東京で300年続く酒蔵の23代目として、地域の特性をいかした酒造りをしています。

画像

小澤酒造株式会社 代表取締役

小澤 幹夫 さん OZAWA Mikio

Profile

東京都出身。2008年経営学科卒業。食品流通会社で4年半、財務経理部の仕事に携わる。その後、小澤酒造株式会社で営業を5年経験し、2019年に社長就任。元禄15年創業の小澤酒造の23代目当主となる。2021年、フランス・パリで開催される権威ある日本酒コンクール「Kura Master」にて、約1000銘柄の中から「澤乃井 純米大吟醸」がプレジデント賞(1位)に選ばれた。

 東京にある小澤酒造は、「澤乃井」をはじめとする日本酒を造っている会社です。酒蔵といえば新潟など東北のイメージが強く、「東京で酒蔵?」 と驚かれることもありますが、我々が300年前から酒造りをしているのは、自然に恵まれた青梅市。連なる山々に挟まれた渓谷にあり、湧き水が豊かな地域です。

 米と水が原料の日本酒は、シンプルがゆえにその質が非常に大切です。「お米は保存が効き流通性も高いですが、水は液体で、運ぶのはとても難しい。」となるとやはりきれいな水のそばに立地しているということが酒造りにおいて重要な条件になってきます。

 澤乃井というブランド名の由来は、「沢井村」という地域名が由来。「沢井」とは、豊かな名水が沢となって流れることを表しています。そのきれいな湧き水を使って造っているのが我々のお酒です。

 口当たりの良い甘みと華やかな香りのある定番の「澤乃井 純米大吟醸」のほか、軟水と硬水の異なる水質の井戸を近距離に有す、全国的にも珍しい地域の特性をいかした、2種の水で造る「東京蔵人」など、さまざまな酒造りを行っています。

画像
オレンジ募金の返礼品として拓殖大学がデザインされたオリジナルボトル
画像
小澤酒造 正門
画像
澤乃井 特選酒

日本酒をきっかけに、日本文化も楽しんでほしい

 300年続く酒蔵の23代目当主というと、「プレッシャーを感じませんか?」とか、「大変じゃないですか?」と言われることも多いのですが、意外にそうでもないんです。皆さんから見たら非日常的に見える300年前の酒蔵でも、僕からすると子供のころから暮らしている我が家が隣にある場所。従業員の方にお菓子をもらったり、蔵でかくれんぼして怒られたりしながら過ごしていました。小さい頃から「跡継ぎになるのかな」と思っていたので、自分でも驚くほどすんなりと、受け入れることができました。

 近年、私が注力しているのは、インバウンドの取り組みです。海外の方は、おいしいから飲むという方もいれば、日本酒を飲むことで日本の文化に触れたいという方も。旨い酒を提供するのは当然のことですが、そのヒストリーや、酒器の意味など、好奇心を満たす情報を提供し、楽しんでいただけるように心がけています。

たくさんの経験が、大人になっていきてくる

 大学時代、孫子の戦術を読み解きながら、経営戦略に落とし込むゼミの授業があり、友達や先生とわいわい話すのがすごく楽しかったことを覚えています。現在の仕事に役立っているかはわかりませんが、勉強が楽しいと思えたことは貴重な経験だったと思います。いまだに教科書も残してありますよ。

 授業後は、絵に描いたような文系の大学生の生活を送っていたので(笑)、友達としょっちゅう、飲みに行っていました。現在はみんな仕事に家庭にと忙しそうではありますが、学部やゼミの友人とLINEグループでつながっているので、年に何回かは都内で集まり、酒を飲みながら当時の話をする関係が続いています。

 実家から大学までの通学時間が長く、サークルや部活動はできなかったのですが、居酒屋と本屋でアルバイトをしていました。本を読まない学生だった私が本屋でアルバイトをはじめたのは、暇なときに漫画の最新刊が読めるだろうと考えたから。でも実際は忙しくてそんな時間はありませんでしたね。
ただ、このアルバイトをきっかけに、本を読む習慣ができたんです。私は不純な動機でしたが、一緒に働いている人たちは本好きが多く、面白い本や流行っている本を教えてもらって読むようになりました。今でも本は読むので、大学時代のアルバイトの経験がすごくいきているなと思います。

 学生の皆さんの中には、合理的に効率よく、やりたいことだけを勉強してそれ以外に時間をあまり使いたくないと思っている方も多いかもしれません。でも若いときに色々な体験をして、大量のインプットをするというのは、絶対に無駄なことではないと、いま40歳になって強く感じています。何が功を奏し、何がきっかけになるというのは、自分では図れないもの。積極的にたくさんインプットすると、それが大人になっていきてくる。ぜひ経験を積み重ねていってほしいです。

画像
大学時代、卒業旅行で訪れた沖縄にて
画像
羽村市「根がらみ前水田」のチューリップ畑にて
教えて!1問1答
愛読書は何ですか?

三浦綾子著『塩狩峠』 (新潮文庫、1973年)

主人公の鉄道員が自らを犠牲にして鉄道事故を止める悲しい物語。人として清く正しく生きるということについて考えさせられる 一冊でした。三浦綾子さんの本は好きでひと通り読んでいます。

画像
休日の過ごし方は?

子供と一緒に公園で遊んでいます。

仕事が忙しく週休2日というわけにはいきませんが、子供と公園へ行って遊ぶ時間はとても幸せです。現在2歳半ですが、自然が好きで虫を見つけると追いかけて遊んでいます。

画像
近所の公園で花を見つけて
画像
地元の青梅市でたけのこ掘り体験

関連記事 Related articles